時代小説傑作選「あやかし」を読んだ。六人の作家が書く六つの物語。
「四布の布団」
一話目の導入部で早速ワケわからんでついて行けない。ヤバイ。
こういうドタバタするシーンは動画にしてくれないともう読んでいて想像力が付いていかない。
面白かった。家中の人が死体を担いであっちへ押し付けこっちへなすりつけ、なんて完全にギャグマンガだ。まあるい絵柄で描かれたものをコロコロコミックとかで見てみたい。そう、そうだ。コロコロだとしっくりくるんだ。なんだか、おぼっちゃま君あたりで似た話を読んだことがある気すらしてきた。
常軌を逸した怒号でびっくりしすぎて気を失うなんて、やっぱりマンガの方が映えるよなあ。
「こおろぎ橋」
物語に出てくる彼岸花って良いね。見て何を思うか、綺麗に思ったり気味悪いと思ったり、見る本人のその時々の心情・読む人のその時々の解釈で大きく変わるところがいい。
一生懸命に走り続けてきた人が、ある時ふと立ち止まってみたら…な話は好きだ。多分、自分がそんな生き方をしたことがないからちょっと憧れている。でも悲しい話が多いので進んで読みたくはない。
見たことのない方言だった。伊勢の方じゃ本当にある言葉なんだろうか。花魁言葉のイントネーションで読んでしまうのは自分の心が汚れているからだ。
「あやかし同心」
バディもの。同心がのっぺらぼうという、明らかに異質なものが当たり前に存在する町。藤子不二雄の世界。とはいえ異質な能力を持っているわけではなく、表情がわかんないし言葉を話すこともできないからコミュニケーション手段にやや難ありという。が、親の代から付き合いが続く部下だけは以心伝心で理解できる。おまえが能力者かよ。
いやあ、これは小説じゃ無理じゃない?大量の紙を手繰って高速筆談とか、事前に書いてあって「こうなることを読んでいたというのかっ!?」とか。マンガ・アニメにした方が万倍面白いと思う。
人並み以上に寡黙な同心に対して都合良く人並み以上に騒々しい同僚がいて、以心伝心の部下もまた都合の良い説明役でしかないしで、デコボコなようで揃うと平たい三人組。
「うわんと鳴く声」
完全に置いてきぼりにされてしまった。主人公も置いてきぼりにされているので、最初の方こそ一緒になって「おい、おまえ何やってるんだ、一体何者なんだ?」と思いながら読み進めていったら主人公もおかしな事になってきておいっ!どういうこと!?
結局、主人公が主人公じゃ無かった。そして「どろろ」+「うしおととら」みたいなのの新連載第一回みたいな終わり方をした。広げた風呂敷の大きさがどろろの比じゃないのでむしろ気が引けてしまう。第二回があったとして読むかなー?どうかなー?
「夜の鶴」
「狸はよう懐く~」狸って好奇心は旺盛らしいけど懐くとか聞いた事ないなあ………檻に入れられた畑を荒らす狸を見た事あるけど目の周りはマダニらしきものがびっしりで全然可愛くない。狸は狂犬病の媒介もせんかったか?アレが人に懐くとな?…と、そんな事が気になってしまった。
いる訳ないけどいて欲しいあやかし。来てくれたのはあやかしなのかどうかもよく分からない。気のせいかも。狸が化けて恩返しに来てくれたのかも!?面白いっちゃあ面白い、でも肝心な所でまた狸が出てくるから「ええ…狸ってそんなんなん?」と変な所が気になる。
「逃げ水」
他より2倍以上のページ数を与えられた大トリ。宮部みゆきは名前しか知らなかったので初。文章は変な所がくどい。一番?いや、もしかしたら唯一の「とても時代劇っぽい」何が違うんかな?
あんま合わないな?なんか、ちょっとした一言、ちょっとした動作がどうもしっくりこない。面白くなりそうでならない。
なんでだろう?連作の中途の話だからかな?
全体的に、傑作選というよりはカタログみたいな。ピンとくるものがあったら続きを買ってください、っていう。
コオロギ橋は他の話を読みたいな。